総社文学会

総合文芸誌「総社文学」昭和47年 創刊

【文学散歩】井伏鱒二 文学碑(福山市 加茂町)

井伏鱒二 文学碑

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 このさかづきを
 うけてくれ
 どうぞなみなみ
 つがしておくれ 
 はなにあらしのたとへも
 あるぞ
 さよならだけが人生だ

 勧君金屈巵満酌不須辞 
 花発多風雨人生足別離

  井伏鱒二  厄除け詩集「勧酒」より 
  平成7年建立


〈木伏鱒二文学碑案内〉
 ここ四川の地は、井伏文学の重要な舞台である。
 その初期、井伏が、郷里に生きる人々の姿を作品に表すときの舞台に選んだのは、この四川沿いの地であった。
 自然のめぐりのなかで、与えられた運命をそのままに生きる人々の姿を描こうとしたとき、この谷間は、井伏に作品創造のしっかりとした足がかりを与えたようである。
 疎開中にはしばしば釣りに訪れ、また、後年の歴史小説や珠玉の随筆にも、この四川周辺が多く登場する。生家のある粟根とともに、井伏文学の原点ともいえるのが、この四川の地である。

四川沿いを舞台にした作品
武州鉢形城
「谷間」「朽助のゐる谷間」「丹下氏邸」「白毛」「武州鉢形城

井伏鱒二 略年譜
1898年 (明治31年広島県深安郡加茂村粟根(現福山市加茂町)に生まれる。
     本名は井伏満寿二
1905年 加茂小学校に入学
1912年 福山中学校(現誠之館高校)に入学
1917年 早稲田大学に入学

1923年 「幽閉」(「山椒魚」の原型)を発表
1938年 「ジョン万次郎漂流記」で第6回直木賞
1945年 郷里加茂村へ疎開
1950年 「本日休診」などで第1回読売文学賞
1956年 「漂民宇三郎」などで日本芸術院賞
1960年 日本芸術院会員
1966年 「黒い雨」で第10野間文芸賞
     第26回文化勲章
     加茂町名誉町民
1972年 「早稲田の森」により第23回読売文学賞
1975年 福山市名誉市民
1989年 広島県名誉県民
1990年 東京都名誉都民
1993年 7月10日 逝去・95歳


【アクセス】福山市 加茂町
       広島県福山市加茂町粟根「四川公園」内
       県道21号線を四川ダム方面へ約1Km

〈撮影〉矢吹恭孝